会長挨拶

(2019年7月)

兵庫腎疾患対策協会 会長
(西宮敬愛会病院 院長 神戸赤十字病院 顧問)

守殿 貞夫

 

兵庫腎疾患対策協会は、国際ソロプチミスト神戸東の事業活動「腎大切にしていますか」を基盤として、1990年9月に発足しました。当協会の目的は、腎疾患の予防、臓器移植の推進を柱として、県民の健康及び福祉の向上に関する知識の普及・啓発に努める事にあります。会員は、個人(一般人、看護師、コメディカル、医師他)、法人ならびに団体からなる正会員、および幹事会の議決を経て推薦された特別会員で構成され、入会の申し込みは随時受け付けております。
当協会では、臓器移植関連の人材養成事業として、兵庫県臓器移植コーディネーター養成助成に努めております。2009年からスペインの臓器移植トレーニングシステム(TPM)への研修者を支援し、現在では、この研修経験者を中心に県内外において臓器提供推進トレーニングシステムに基づくワークショップ、研修を実施、臓器移植推進活動に努めております。

 

動かない移植医療

改正臓器移植法が施行され、脳死下の臓器提供が増加しましたが、心停止後の臓器提供が激減し、臓器提供総数は増えていません。アメリカでは、人口3億2800万人に対して年間約1万人が死(脳死・心停止)後に臓器提供しており、臓器移植件数は2万件を超えます。日本では、人口1億2000万人に対して、死後に臓器提供する人は年間100人前後でアメリカやヨーロッパの諸外国に比し格段に少ないのが現状です。
その背景として、世界のほとんどの国では、脳死は人の死とし、臓器提供とは無関係に認めており、アメリカ、ドイツ、イギリスなどでは本人の生前の意思表示または、家族の同意のどちらかがあれば、脳死後の臓器提供が行われます。オーストリアやフランス、スペインなどでは、本人が生前、臓器提供しないとの意思を示しておかない限り、臓器提供するものとみなされます。日本では、法改正後も臓器移植などの目的で脳死を法的に示す必要のある場合だけ、手順に則った脳死判定が行われます。臓器提供の目的がないときには脳死判定をすることはできません。
このように脳死判定に大きな開きがありますが、日本の臓器移植の現状を打破するには、我々には何が出来るのか。

 

移植医療には医療者の体制整備を

現在、日本で臓器提供が少ない一因として、医療関係者も含め、国民全体に移植医療への関心の低さが上げられます。以前からの、「知らないから関心がない、知らないから決められない」という状況が依然として続いています。しかし、日本の内閣府の世論調査「自分が脳死・死亡と判断された際に臓器提供を希望すると答えた国民の割合は41.9%、臓器提供の意思を表示していない場合でも家族が提供を承諾する割合が38.7%、臓器提供意思を表示している場合にその意思を尊重する家族の割合は87.4%」との報告を踏まえれば、臓器提供への国民の受容性はむしろ良好で、必要なのは医療者や施設側の体制整備が問題であるかもしれません。臓器提供件数を増加させるには、臓器提供側医療者が臓器提供の情報、仕組みを熟知している事が重要であるが、全ての臓器提供病院に死後の臓器提供について十分な情報が提供されていない現状がある(野島道生氏:改変)。解決策として、医療者への教育が重視されるとした上で、「臓器提供を進めるために重要なことはシステム構築と医療者のトレーニング、国民がそのシステムを信頼すること」と述べられている(渥美生弘氏:改変)。
私は、医療人を含め全国民に移植医療への更なる関心・理解を持って頂くために、厚生労働省が提唱した「人生会議」の中で臓器移植・臓器提供について家族間で、話し合って頂くことを提案します。

 

臓器移植を語ろう「人生会議」で

厚生労働省は、人生会議と称し、「健康時から将来の自分にとって望ましい“医療・ケア・プラン” を家族間で、時には医療人の力を借りて予め考え、家族間でそれらを共有しましょう」と提唱しています。 
私は、この「人生会議」の中で、臓器提供について家族間で話し合い、臓器提供の意思確認をして頂きたいと思っています。「脳死状態になった家族の一人がドナーカードを有し、臓器提供の意思があったこと」を家族が共有していれば、臓器提供に繋がります。「知らないから関心がない、知らないから決められない」ということは無くなり、日本の移植医療も良い方向へ変わって行けるものと考えています。
当協会は、臓器移植の推進、ならびに生命や生活の質に重大な影響を与えるCKD(慢性腎臓病)の発症・進展予防策の推進を目指し活動して行きます。当協会の趣旨に賛同して頂ける皆様におかれましては、ご支援・ご入会方よろしくお願いします。

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